<作品>
・作品1 『ハタチ』
歌詞:
愛が欲しかった ずっと
愛が欲しかった もっと
離れていいよと言を放った
ほんとは離れてほしくないけど
僕はそれしか言えなかったんだ
心の傷はずっと癒えなかった
僕に会うために帰ってくる日曜日
宥めて悩んで泣いたとしても
愛はくれずに沈んでいく
全部僕が悪い そんなことないけど
僕の病が引き離したんだ
僕の家族はあの日に無くなった
苦い暑さが残ったあの日に
初めてこの世界を見た
子供になれずにハタチになった
ハタチになるまで生きてしまった
ハタチを生きるこの命が苦しかった
消えてしまおうと息を殺した
僕の命が軽く扱われた
これが僕にできる精一杯で
辛いと思える隙もなかった
何事もなかったように進む現実に
藻がいて足掻いて進もうとしても
浅い水にただただ溺れていく
飲み込まなきゃいけない現実と
飲み込みたくない心
乗り越えなきゃいけない未来と
乗り越えられない過去
理想とかけ離れたこの世界で
生きていかなければならないんだ
心の準備も出来ていないまま
独りで歩いていくしかないんだ
子供になれずにハタチになった
ハタチになるまで生きてしまった
ハタチを生きるこの命が苦しかった
苦しかった20年間
新しい家族ができた
新しいカタチの愛を知った
嬉しいことも楽しいことも
悲しいことも辛いことも
話せるようになった
ハタチになって自由になった
ハタチの僕も息をしていた
ハタチを生きるこの命を愛せたら
僕を僕として認めることは
まだできないけど
いつかいつかきっと
心に開いた
穴を広げずに
生きていきたい
コメント:
Giver
今回Giverとして、同い年のMakerの方と対話をする中で、自分の人生の中で何があったのか、しっかり振り返るきっかけになったと感じます。虐待や病気や障害、ジェンダーなど、当事者じゃなければわからないことがたくさんある中で、今自分と関わってくれている人には現状しか話す機会がありません。過去のことを人に全て話したのははじめてかもしれません。自分は20歳を超えて生きる意味は当事者として発信することだと思っています。わたしとおなじような辛い体験がこの世界からなくなるように。私の経験で、ひとりじゃないと思える人がいるように。願っています。
Maker(りこり。)
この楽曲は、Giverさんと実際に対面で話し、その場でキーワードを拾って歌詞とメロディとを同時に作成していきました。この楽曲を作成することで、自分の人生を見直すきっかけ、愛とは何かを考えるきっかけになりました。
・作品2 『安viva憐s』(アンビバレンス)
歌詞:
誰かの夢を潰してまで守りたいもの
人の間で生まれた問題さえ
スクイたい想いも掬えないから
きっと誰もが同じはずなのにね
夢を見失う君の姿はみたくないよ
腐ってしまった心でも遅くないよ
耳を澄まして、指先で繋いでよ
あの頃は上手く奏でられた
一人の力ではなにも出来ないから
決断の言葉思い出してさ
今ある悲しみを解りあうこと
今あの喜びを分かち合うこと
誰かのことを支えることも出来ないのか
分かり合えないことが悪いのか
少しずつズレた君の心から
耳障りな音が鳴り響く
後になって気づくあいつがまた築く
はずだった言葉に混じる本音と矛盾
分かり合えない、思いは複雑で
壊れる理由はいつだって単純で
何もかも隠して生きる僕らはさ
人狼ゲームはもう飽きたから
絡まる悩みを解いた先で
分かち合える日をずっと待ってる
挑戦するあいつはさ
綺麗な目で訴えていた
これから奏でる物語を
夢のままで終わらせないために
僕らが奏でるメロディーこそが
この世界を変えるんだ
耳を澄まして、指先で繋いだら
きっと次のフレーズで奏でられる
自分一人じゃなにも出来ないけど
あの頃の言葉忘れられずにいる
今じゃなくてもいいあの悲しみを
今じゃなくてもいいあの喜びを
分かち合うこと
コメント:
Giver
誰もが、モヤモヤして苦しいけどこの気持ちを消化できないと感じた経験があると思います。今回makerさんとの対話を通じて自分の気づかなかった本当の気持ちに気づき、当時は持て余していた感情を消化することができました。自分の体験が音楽という形になり発信される事で、悩みを抱える人に「苦しさを音楽に変えて消化する」という選択肢があるという事を知っていただければ嬉しいです。
Maker1
集団で生きていく中での自分の本音や、相手に対する思いなどの混乱した感情を表現しました。たどり着く思いは同じなら、そこに行き着くまでの葛藤は意味のあるものであるということが伝われば嬉しいです。
Maker(りこり。)
安viva憐sの、vivaは生きるという意味があります。どんな組織でも、たくさんの人のプラスの感情、マイナスな感情がぶつかりあって矛盾し合って葛藤があって存在してると思います。この曲を聴いて、そのような中で生きていこうとする様子を感じ取っていただけたらなと思います。
・作品3『3.12』
歌詞:
何かが確かに起きている
だけど何が起きたか分からない
張り詰めた空気の中で
自分だけが取り残される不安
自分に出来ることが何も無くて
ただアルミホイルに巻かれていた
恐怖と無力感を覆い隠して
取り繕って笑ってみせる
部屋の中でしたキャッチボール
最後に思えた父との時間は
このカプセルに閉じ込めて
寂しい思いは投げきれないけど
触れる思い出を傍に残した
最後じゃないと思えた日まで
生き延びる術を覚えたって
生きにくい世の中だった
故郷を隠す罪悪感
揺れ動いた過去を仕舞っては
揺るがない故郷を泣かせた
どこに行っても居場所がなくて
どちらにも属せないこの葛藤
割り切れるわけないけれど
割り切らなきゃいけなかったんだ
無理やりにでも持ち上げて
やっと周りが見えてきたんだ
許す許さないとか
怒る怒らないとかじゃなくて
思い出して欲しいとか
忘れないで欲しいとかじゃなくて
無かったことにしないでほしい
二度と繰り返さないで欲しい
喪失感に苛まれながらも
割り切れない想いも呑み込んで
今の自分と付き合っていくしかない
気遣いの交差が疲れを生む
本音で話せない日々の中
何処まで踏み込ませていいのかな
終わっていないけど
過去なんだと諦めた
そんな自分が 違和感で
ふるさとで築かれた自分に
執着や愛着はあるけど
人生の半分という
余りにも長いときを
避難しているから
いつかどちらも誇りになればいいな
今私に何ができるだろう
今日も考えて、考える
無かったことにならないように
二度と同じ思いをさせないように
私は今日も語り続ける
当たり前は当たり前じゃなくて
だからこそ今を大切にしたい
私は私が生かしていくんだ
人に苦しめられたけど
人に助けられている
全部理解できなくても
そばに居てくれたら 笑ってくれたら
前を向けるから
孤独とも付き合えるようになった
そんな出逢いを大切にしたい
ふとした瞬間に全てを失った
当たり前は当たり前じゃなかった
不安で臆病になることもあるけど
だからこそ今を大切にしたい
安心を添えて勇気を授けるような
この人生が誰かの過去と重なる日まで
時間を超えて 恩を返せるように
この人生と関わってくれた全ての人へ
届くように 今日も私は 語り続けるんだ
故郷も繋がりも喪った
懐古や悔しさ、怒りから
ただ目を逸らしたくて
この場所にはもう
私の時間は流れていない
もう、無くなってしまったんだなあ
コメント:
Giver
寄り添っていただきながら、楽曲作制の過程に参加させていただいたことが非常に嬉しかったです。言葉で伝えることが難しいことを、歌にして代弁してもらうことで改めて自身の経験と向き合う機会を頂けたような気がしております。
Maker1
どんな被害があったのか、どんな思いをしたのか、それはメディアを頼りに今まで何度も思い返し、寄り添った気でいました。でも時間は進んでいます。この曲を作り、被災した方は「今何を思っているか」が大切であることに気付きました。曲中の歌詞にあるように、「無かったことにしないで欲しい」「二度と繰り返さないで欲しい」これを世間に伝えるのがkokoro noteが存在する意義だと思います。
Maker2(りこり。)
どのくらいの避難者がいて、どのくらいの被害があったのかというのをデータでみても伝わりきらないことはたくさんあります。メディアでは被災者で人括りにされますが、被災した方一人一人にエピソードがあって、その個別のエピソードの中に大切な真実があると思います。組織や立場や世間の目があって自分の判断でものを言えない、特に原発事故の話題など、話すことさえタブーとされるような、当事者をだまらせるような無言の圧がある世の中で、唯一制限をとっぱらって自由に動くことができるのが表現の世界である、芸術です。音楽です。kokoro noteの取り組みが、誰かの人生を、社会を救えますように。3.12が、1人の人生をどれだけ狂わせたのか。どのような思いで今を生きているのか、どのような思いで語るのか、というのを、この曲を聴いて感じて頂けたらなと思います。
Audience(被災当事者)
3.12という、世界が終わったと絶望した次の日、逃げてきた山の上からみた郡山が真っ暗でそこだけ抜け落ちたみたいな、サイレンの音とかが鳴り止まずに1秒たりとも気が抜けない状況で、色々なことを考えた。その日の情景が思い出されてぶわっときた。人の体験をここまで吸収して表現していて感動した、これからも作り続けて欲しい。
絵:
コメント:
Maker
何も分からなかった少女と爆発。左下は当時の様子。
アルミホイルという歌詞が印象的で作った黒と白と青の壁。
見えようとする光と戻れない過去と事実に光にも黒い影が光ってる形。
光に包まれる空は、少女のこれからを表している。空には雲や鳥が飛んでいて、少女を迎え入れるも、それが見えない当時の包まれてしまった状態を表した。
直接の対話、作曲を終えた中で曲を聴いたイメージを絵にしました。
不安な気持ちもありながら、どう動くこともできなかった、もどかしさを強く感じました。外の世界と壁で離されているような、アルミホイルという歌詞を壁に例えました。東京にいた私も、何もできないもどかしさを覚えていたことを思い出しました。
大切な記憶を伝えてくださり、私も忘れずにきちんと残していけるようにしたいと感じました。